特例有限会社

特例有限会社 特例有限会社

今回の記事は、特例有限会社についてのまとめ記事です。
株式会社との比較を踏まえて、まとめています。

01 特例有限会社とは?

特例有限会社とは、2006年(平成18年)5月1日の会社法施行以前に、「有限会社」だった会社で、その後も「株式会社」等に移行せず、「有限会社」のまま継続している株式会社のことです。

なお、「有限会社法」が廃止されましたので、「有限会社制度」の廃止にともない、
新たに「特例有限会社」を設立することは、できません。

また、特例有限会社は、定款変更をして、「特例有限会社の解散登記」と「株式会社の設立登記」をすることによって、通常の株式会社となることができます。

(※特例有限会社から通常の株式会社への移行では、債権者保護手続は不要です。)

「特例有限会社」から「通常の株式会社」への移行の申請書例は、コチラ▼

>>『特例有限会社から通常の株式会社への移行の申請書例』

a.特例有限会社の特徴・メリット

特例有限会社の特徴やメリット

特例有限会社の特徴やメリットについて、「通常の株式会社」と比較しつつまとめました。

①会社の株式は「譲渡制限株式」しか発行できない

「特例有限会社」では、「譲渡制限株式」しか発行できません。
なので、必然的に、「特例有限会社」は「非公開会社」となります。
なお、株主の譲渡の承認は、必ず「株主総会」が行います。

②取締役の任期制限がないこと

「通常の株式会社」では、取締役の任期の期限は最大で10年ですが、
「特例有限会社」には、取締役の任期の期限がありません。
なので、役員変更登記の必要もありませんので、登記申請時の登録免許税や司法書士等への手数料もかけなくて済みます。

③12年以上、特例有限会社に関する変更の登記がなくても、「休眠会社のみなし解散規定」の適用を受けないこと

「通常の株式会社」では、最後に登記した日から、12年間、何も登記しないと、”解散したものとみなされる”という「休眠会社のみなし解散規定」の適用を受けてしまいます。
ところが、「特例有限会社」では、そのような適用を受けませんので、12年以上、変更登記をしなくても「休眠会社」とはみなされません。

④決算公告が義務付けられない

「通常の株式会社」では、原則として「決算公告」が義務付けられています。
ところが、「特例有限会社」なら、決済公告の義務付けはありません。
つまり、貸借対照表の公告は不要です。

⑤会計監査の義務がない

「通常の株式会社」の「大会社」においては、「会計監査人」の設置が義務付けらています。
ところが、「特例有限会社」は、会計監査の義務付けはありません。

⑥「監査役」を設置しても、「会計監査限定の監査役」となる

特例有限会社で、「監査役」を置くことはできますが、監査の範囲は ” 会計に限定 ” されます。

b.特例有限会社のデメリット

逆に、特例有限会社のままにしておく場合のデメリットについて、まとめました。

①会社の実情に合わせた自由な「機関設計」ができないこと

「特例有限会社」では、取締役と監査役を置くことができるのみで、取締役会・監査役会・会計監査人・指名委員会等,監査等委員会・会計参与は、設置できません。

②株式の譲渡制限を解除することや、「公開会社」となることはできない

特例有限会社では、譲渡制限株式しか発行できません。
つまり、非公開会社から公開会社への移行はできません。

③株主総会/特別決議について、決議要件が「総株主の半数+議決権の4分の3」

決議要件が「総株主の半数+議決権の4分の3」というように加重されているので、「定款変更」などの決議は、「通常の株式会社」と比べて、少々やっかいです。

④特例有限会社同士の合併・会社分割、又は、特例有限会社を存続会社側とする吸収合併・吸収分割は、できない。

特例有限会社と特例有限会社の合併や会社分割はできません。
また、特例有限会社を存続会社等側とする吸収合併や吸収分割もできません。

⑤特例有限会社のままでは、「株式交換」「株式移転」「株式交付」は、できないこと

特例有限会社は、「株式交換」「株式移転」「株式交付」は、できません。
これは、複数の事業会社を統括するような会社の設立では、不便です。

「通常の株式会社」の株主総会/普通決議・特別決議・特殊決議の決議要件はコチラ▼

02 特例有限会社まとめ表

上記の特例有限会社の特徴も含め、「組織再編」や「役員の登記事項」も、まとめた表が次のとおりです。

譲渡制限の定めを廃止する 不可
株主総会特別決議 定足数
決議要件 総株主の半数+議決権の4分の3
機関設置   ・取締役は必要
・監査役を置くことは、可能
※たとえ監査役を置いても「監査の範囲は会計限定」
不可 「取締役会」「監査役会」「会計監査人」は設置できない
役員の任期 取締役・監査役 任期なし
貸借対照表の公告 不要
休眠会社のみなし解散 なし
組織再編 合併 合併の「消滅会社」となる場合 可
会社分割 会社分割の「分割会社」となる場合 可
株式交換
株式移転
株式交付
不可
役員の登記事項 取締役 氏名・住所
代表取締役 氏名(平取締役がいる場合のみ)
監査役 氏名・住所

特例有限会社の組織再編に関しては、「有限会社制度」じたいが廃止されたので、基本的に消滅していく「消滅会社側」になることはできても、存続会社側にはなれないのニャ。

株式交換,株式移転,株式交付は、すべてできないニャ。

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a.特例有限会社まとめ表のスクショ用画像

上記の特例有限会社まとめ表のスクショ用画像を作成しました。
暗記ツールとして、お役立てください。

03 特例有限会社から株式会社へ移行の申請書例

特例有限会社は、

・特例有限会社の解散登記
・株式会社の設立登記
・・・の2つの登記をすることによって、「通常の株式会社」へと移行することができます。
その登記申請の例が次のとおりです。
  設立の登記 解散の登記
登記の事由 年月日 商号変更による設立
※日付は「商号変更の決議日」
商号変更による解散
登記すべき事項 株式会社の設立登記と同一事項
【商号区】
会社成立の年月日

【登記記録区】
特例有限会社の商号
商号を変更した旨
 年 月 日 ※登記申請日

 年 月 日
◯◯市◯区乙町一丁目1番 株式会社Aに商号変更し、移行したことにより解散
その他注意事項 ※取締役,監査役の就任年月日は、登記官が職権で記録してくれます。

→その日付は従前の役員の就任年月日
→会社設立時からの在任者は会社成立日
→商号変更時に新たに就任する役員は、
   商号変更の効力発生日

・特例有限が商号変更し移行すると同時に
従前の取締役が辞任する場合は、辞任により退社したことの立証書面を添付
          例:辞任届

添付書面は一切不要!
(委任状も何も添付しなくていいです。)

以上、特例有限会社についてのまとめでした。お疲れ様でした。

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