動産譲渡担保
公開日 2019年1月12日 最終更新日 2019年7月13日
もくじ
動産譲渡担保
最決平11.5.17 譲渡担保権に基づく物上代位行使
譲渡担保権者は、設定者により売却された当該動産の「売買代金債権」に
譲渡担保権に基づき物上代位できる。
最決平22.12.2 集合動産/物上代位/通常の営業を継続
「構成部分の変動する集合動産」を目的とする譲渡担保権者は、目的物が滅失した
ことにより、設定者が取得した「保険金請求権」に物上代位行使できる。
もっとも、「構成部分の変動する集合動産」を目的とする「集合物譲渡担保契約」は、
設定者が「目的動産を販売して営業を継続すること」を前提としているので、
設定者が「通常の営業を継続している場合」には、目的動産の滅失により、
上記請求権が発生しても、譲渡担保権者は「保険金請求権」に物上代位行使は
できない。
最判昭35.2.11 集合動産/範囲を超える売却/集合物から離脱したときのみ
「構成部分の変動する集合動産」に譲渡担保が設定され、
設定者が「通常の営業の範囲を超える売却処分」をした場合には、
「譲渡担保権の目的である集合物」から離脱したと認められない限り、
「処分の相手方(買主)」は所有権を取得できない。
買主は「占有改定による引渡し」を受けたにすぎず、
「目的物は集合物」から離脱していないので、買主は所有権を取得できない。
買主は、目的物を「占有改定」により「即時取得」できない。
最判平8.11.22 清算金支払請求権と受戻権
設定者は、譲渡担保権者が「清算金の支払いをせず、清算金がない旨の通知もしない」間
に設定者の「受戻権」を放棄しても、譲渡担保権者に対し、清算金の支払いを請求できない。
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「清算金支払請求権」と「受戻権」は、あくまでも別個の権利だから。
最判昭35.2.11 占有改定による引渡しは即時取得 不可
① | BのAに対する金銭債権担保のため、Aの動産甲に「譲渡担保」を 設定した。 設定者:A |
② | Bに対し、「占有改定による引渡し」をした |
③ | Aは、善意無過失のCに対し、動産を譲渡し、 「占有改定による引渡し」をした。 |
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④ | Aが動産甲に譲渡担保を設定したことにより、動産甲の所有権は Bに移転する。 |
⑤ | Aは無権利者である。 |
⑥ | 「無権利者であるA」から譲渡を受けたCは、原則として動産甲の所有権を 取得できないが、 動産甲を「即時取得」することができれば、Cはその所有権を取得し得る。 |
⑦ | しかし、「占有改定による引渡し」がされても「即時取得」は することができない。したがって、Cは動産甲の所有権を取得できない。 |
最判平6.2.22 弁済期後の譲渡担保権者による譲渡
① | BのAに対する金銭債権担保のため、Aの動産甲に「譲渡担保」を 設定した。 設定者:A |
② | Bに対し、「現実の引渡し」をした |
③ | Bの金銭債権の弁済期が到来したのに、 Aは債務を弁済しなかった。 |
④ | Bは動産甲をCに譲渡し、「現実の引渡し」をした。 |
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「設定者である債務者」は、ここまでの時点になってしまうと、
いまさら「債務を弁済して目的物を受け戻す」ことができない。
平成30年度第15問 集合動産譲渡担保
① | Aは、Bに対する貸金債権を担保するために、 |
② | Bから「構成部分の変動する集合動産」を目的とする譲渡担保 として、甲倉庫内にある全ての鋼材について 帰属清算型の譲渡担保権の設定を受けた |
③ | Aは「占有改定」の方法による引渡しを受けた。 |
譲渡担保権者:A
設定者:B
肢ア
① | Bは、「Aに対する譲渡担保権の設定」に先立ち、Cに対して、 甲倉庫内にある全ての鋼材を目的とする譲渡担保権を設定し、 「占有改定」の方法による引渡しをしていた。 |
② | Aはその事実を知らなかった。 |
③ | BがAに対する貸金債務の弁済期を徒過した |
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【解答】Aは、譲渡担保権を実行することができない。
Cは、Aよりも先に「占有改定による引渡し」という形で、「対抗要件」を備えている。
ところがAは、Cよりも後に対抗要件を備えたことになるので、Cには対抗できない。
肢イ 最判平18.7.20
① | Bは、通常の営業の一環として、Cに対して、甲倉庫内にある鋼材の一部 を売却し、Cの乙倉庫に搬入した。 |
② | そのときBは貸金債務の弁済期を徒過していた。 |
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「設定者」には、「通常の営業の範囲内」で「譲渡担保の目的を構成する動産」 を処分する権限が付与されている。 |
この権限内でされた処分の相手方(C)は、動産について “ 譲渡担保の拘束を受けることなく ” 確定的に所有権を取得する。 |
肢ウ 「集合動産譲渡担保権」と「動産売買の先取特権」
① | 甲倉庫内にある全ての鋼材は、BがCから買い受けたものだった。 |
② | Bはその代金をCに支払っていなかった。 |
③ | Cが「動産売買の先取特権」に基づいて、「甲倉庫内にある鋼材」 の競売の申立てをしたとき |
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最判昭62.11.10
④ | 「動産売買の先取特権」が存在する動産が、 「譲渡担保権の目的である集合物の構成部分」 となった場合でも、 |
⑤ | 譲渡担保権者Aは既に「占有改定」の方法による 引渡しを受けている |
⑥ | なので、譲渡担保権者Aは引渡しを受けたものとして、 譲渡担保権を主張することができる (動産の先取特権は、引渡しされてしまうと、及ばなくなるので) |
⑦ | 先取特権者が先取特権に基づいて「動産競売の申立て」をしたとき は、譲渡担保権者Aは、訴えをもって「動産競売の不許」を求める ことができる。 |
肢エ 最判昭61.7.15
「譲渡担保権」によって担保されるべき「債権の範囲」は、設定契約の当事者間において
自由にこれを定めることができ、第三者との関係でも、
民法375条(抵当権の被担保債権の範囲)の規定に準ずる制約を受けない。
肢オ 最判昭62.2.12
① | Bが貸金債務の弁済期を徒過した。 |
② | AはCに対して、甲倉庫内にある全ての鋼材を売却した。 |
③ | Aは清算金の支払いをせず、清算金がない旨の通知もしてない |
④ | Bも債務の弁済をしていない |
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譲渡担保権者Aが、第三者Cに売却等をしたその時点で、債務者Bは
「受戻権」ひいては「目的物の所有権」を終局的に失う。