不動産の譲渡担保

譲渡担保権のしくみ(図解)

譲渡担保権のしくみ

「留置権」と「清算金支払請求権」と「受戻権」

留置権とは?

目的物を留置することにより、被担保債権の弁済を間接的に強制する。
⇒留置権を主張するためには、「目的物を留置すること」によって「被担保債権の弁済を促す」
関係になければならない。

清算金支払請求権とは?

債務者の債務不履行により、譲渡担保権者が担保権を実行すると、
「被担保債権」と「譲渡担保権の目的の不動産」との差額を清算しなければならない。

ここで、債務者に「清算金支払請求権」が発生する。

受戻権とは?

「譲渡担保の設定者」が債務の全額を弁済し、「譲渡担保権」を消滅させ、
目的物の所有権を回復する権利。

「留置権」と「損害賠償請求権」or「清算金支払請求権」

最判昭34.9.3 「損害賠償請求」と「留置権」

Aは、Bに対する貸金債権の担保として、B所有の甲土地に譲渡担保の
設定を受けた。
そして所有権移転登記を備えた。
Aが設定契約の内容に反して、甲土地をCに売却し、所有権移転登記をした。
Bは、譲受人Cから明渡請求を受けた。
債務者Bは、譲渡担保権者Aに対して取得した「担保物返還義務不履行」による
「損害賠償請求権」をもって、留置権を主張した

 

Bは、譲受人Cからの明渡請求に対し、「留置権」を主張することはできない。
なぜなら、「損害賠償請求権」と「担保不動産」との間に牽連関係が認められないので。

比較判例 最判平9.4.11 「清算金支払請求権」と「留置権」

清算金支払請求権を被担保債権とする留置権の行使

不動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合において、
「譲渡担保権者」が譲渡担保権の実行として目的不動産を「第三者」に譲渡したときは、
「譲渡担保権の設定者」は、その「第三者」からの「明渡請求」に対し、
「譲渡担保権者」に対する「清算金支払請求権」を被担保債権とする「留置権」を行使
することができる。

最判平18.10.20

Aは、Bに対する貸金債権の担保として、B所有の甲土地に譲渡担保の
設定を受けた。
そして所有権移転登記を備えた。
貸金債権の弁済期が到来したが、Bが債務を弁済しなかった。
Aの債権者Cが、甲土地を差押え、その旨の登記がされた。
その後、債務を全額弁済した設定者Bは、「第三者異議の訴え」による
「強制執行の不許」を求めた

 

設定者Bは、「差押え登記後」に債務の全額を弁済しても、「第三者異議の訴え」による
「強制執行の不許」を求めることはできない。

なぜなら、「被担保債権の弁済期後」は、設定者としては『目的不動産が換価処分されること』
を受任する立場にあり、

「譲渡担保権者の債権者」による「目的不動産の強制競売による換価」も、
「譲渡担保権者」による「目的不動産の換価処分」と同様に、
受任すべきだから。

目的不動産を差押えた「譲渡担保権者の債権者」との関係では、差押え後の
「受戻権行使による目的不動産の所有権の回復」を主張することができなくても、
やむを得ない。

【もし、「被担保債権の弁済期前」であれば】

「被担保債権の弁済期前」に「譲渡担保権者の債権者」が目的不動産を差押えた
場合には、少なくとも、設定者が「弁済期までに債務の全額を弁済し、目的不動産を
受け戻した」ときは、設定者は「第三者異議の訴え」による「強制執行の不許」を
求めることができる。