【2023年更新】抵当権(のみ)の譲渡をイラストを使ってわかりやすく解説

抵当権のみの譲渡アイキャッチ 抵当権の処分

抵当権の処分系には、次の3つの似通ったものがあります。

1.抵当権の処分
 Ⅰ.抵当権(のみ)の譲渡
 Ⅱ.抵当権(のみ)の放棄
2.抵当権(のみ)の順位譲渡
  抵当権(のみ)の順位放棄
3.抵当権の移転
今回の記事では、この中の『Ⅰ.抵当権(のみ)の譲渡』についてをイラスト関係図を使って、わかりやすく解説していきます。

※今回の記事は「抵当権の譲渡」に関するものですが、混乱しやすいのが「(根)抵当権の移転」です。この「抵当権の譲渡」と「(根)抵当権の移転」の違いを知りたい方は、下記のリンクから「根抵当権の全部移転」を参照してみてください。

01 抵当権のみの譲渡

【抵当権(のみ)の譲渡とは?】

例えば、第1順位の抵当権者が、「債務者を同じくする一般債権者」に対し、順位を譲ってあげることです。

順位を譲ってもらった一般債権者は、本来なら「第1順位の抵当権者」が受けるべき「配当金」プラス「一般債権者」が受ける「配当金」の合計額の範囲内で、優先弁済権を確保することができます。
上記の内容をここから更にくわしく、登記記録例やイラスト関係図などで解説しています。

a.抵当権のみの譲渡と抵当権の移転の違い

【抵当権のみの譲渡抵当権の移転との違いとは?

例えば「債権譲渡による抵当権の移転」では被担保債権と抵当権が移転します。

他方、この「抵当権のみの譲渡」では被担保債権が移転するのではなく、「抵当権の優先弁済権のみ」を譲ってあげるという、言わば、「抵当権の処分」にあたります。

そこで、「移転」という文言ではなく、「譲渡」という文言を使い、 ” 抵当権のみの譲渡 ” といいます。

b.抵当権のみの譲渡と抵当権の順位譲渡

【抵当権のみの譲渡抵当権の順位譲渡の違いとは?

・抵当権のみの譲渡は、抵当権者が一般債権者に対して、抵当権のみを譲渡します。
・抵当権の順位譲渡は、抵当権者が、後順位の抵当権者に対し、抵当権の順位を譲渡します。
抵当権のみの譲渡 ” は、抵当権者が一般債権者に対して、抵当権のみの譲渡をします。

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c.抵当権のみの譲渡についてのイラスト付き解説

抵当権(のみ)の譲渡を、事例を交えて、登記記録であらわしてみました。

【事例】

現在、甲区1番 所有権者Xの不動産に、
①乙区1番で抵当権者A(債権額1,500万円)が入っています。
②乙区2番で抵当権者B(債権額1,500万円)が入っています。
③登記記録には出てこない無担保債権者C(債権額2,000万円)が存在します。
これを登記記録であらわすと次のようになります。
①と②
甲区 乙区
所有権保存
   X
抵当権設定
債務者 X
債権額 金1,500万円
抵当権者 A
    抵当権設定
債務者 X
債権額 金1,500万円
抵当権者 B

③登記記録には出てこない抵当権ナシの債権者C

  債務者Xに対する「無担保債権者」C
○○年○○月○○日 金銭消費貸借
債務者 X
債権額 金2,000万円
債権者 C

上記の事例をイラスト関係図であらわすとこんなイメージになります。

d.競売による配当

【事例】

所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金3,000万円でした。

通常の場合の配当

この場合の配当としては、次のようになります。
  不動産の落札価格 金3,000万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円

(債権額 2,000万円)
配当金額
0円
合計 3,000万円

上記をイラスト関係図であらわすとこんなイメージです。

抵当権(のみ)の譲渡した後の配当金

【事例】
所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金3,000万円でした。

「1番抵当権者A」は、「一般債権者C」に対して抵当権(のみ)の譲渡をしました。

この場合の配当としては、次のようになります。

通常の配当   根抵当権のみの譲渡後

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円
配当金額
  0円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円
配当金額
1,500万円

(債権額 2,000万円)
配当金額
0円
配当金額
1,500万円
合計 3,000万円   3,000万円

 

「1番抵当権者A」の通常の「配当金額1,500万円」

「一般債権者C」の通常の「配当金額 0円」
・・・の合計金額『1,500万円』の範囲内で、

順位譲渡を受けた「一般債権者C」は、Aより優先的に配当を受けることができます。


このことについて、イラストであらわすとこんなイメージになります。

抵当権のみの譲渡後の配当

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02 申請書の例

上記の事例の場合での申請書は次のようになります。

登記の目的 1番抵当権譲渡
原因日付 ○○年○○月○○日 金銭消費貸借 同日譲渡 
登記事項 債権額 金2,000万円
利息  年5%
損害金 年5%
債務者 X 
申請人 権利者(受益者) C
義務者 A
登録免許税 不動産1個につき金1,000円

 

以上、「抵当権のみの譲渡」についてでした。
お疲れ様でした。

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