売主の契約不適合責任,買主の権利-追完請求権・代金減額請求権・損害賠償債権・解除権,危険負担の移転

売主の担保責任・買主の権利・危険負担の移転 売買

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今回の記事は、

01 売主の担保責任
02 買主の権利
 a.追完請求権
 b.代金減額請求権
 c.解除権
 d.損害賠償債権
 e.追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除権まとめ表
 f.買主の権利と帰責事由
03 危険負担の移転
・・・についてです。

01 売主の担保責任

【民法改正POINT】

これまでの売主の ” 瑕疵 ” 担保責任ではなく、「契約不適合」といえるかどうかが「売主の担保責任」の発生基準となりました。
➡「売主の担保責任」につき「契約責任説」が採用されました。
「契約不適合」とは、売買の目的物が、”種類・品質・数量において契約の内容に適合しないこと”です。
これは、民法改正(2020年4月施行)から、定められた文言です。

そして、契約不適合責任とは、納品された目的物に、契約内容と異なる点があることが判明したときには、売主が負うべき責任のことをいいます。

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02 買主の権利

買主の権利は、次の4つです。

a.追完請求権
b.代金減額請求権
c.解除権
d.損害賠償債権

a.追完請求権

買主の権利-追完請求権
【追完請求の例】
・購入したパソコンが初期不良だったので、
・買主は、売主へパソコンの修理を依頼したが、
・売主が同機種の新品のパソコン(代替物)を送ってきた。

追完請求権の内容は、次の3つです。

・目的物の修補
・代替物の引渡し
・不足分の引渡し

追完請求権の要件は、次の2つです。
①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと
②買主に帰責事由がないこと

追完請求権の期間制限は、
原則:種類・品質に関する「契約不適合」➡買主がその不適合を知ったときから1年以内
例外:売主がその不適合について「悪意」or「重過失」のとき

【目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合】
買主は、 期間の制限なく 、追完請求権・代金の減額請求権・損害賠償請求権・解除権を行使することができます。

 

>>『行政書士ブログ/民法/債権/契約各論/権利移転型契約/売買契約①追完請求権』へ戻る

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b.代金減額請求権

買主の権利-代金減額請求権
【代金減額請求の例】
Aは、B所有の中古車を購入したが、車に欠陥があった。
買主Aとしては追完請求したが、売主Bには、追完はできないということだった。
そこで、買主Aは代金減額請求をした。

売買契約の履行において、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買い主が売り主に対して、代金の減額を請求すること。

代金の減額を請求する権利は、契約不適合を原因とする債務不履行に対する請求権のひとつである。

代金減額請求は、まずは履行の追完を催告し、追完されないときに行なうことができる。もっとも、催告しても追完を受ける見込みがない場合などは、催告なしに減額請求することができるとされる。

代金減額請求をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

改正民法第563条

上記の条文をわかりやすくまとめると、代金減額請求権の内容は次のとおりです。

・修理すれば直るレベル・新しい物と取り替えてもらえばすむレベル・不足分を追完してもらえばすむレベルの場合には、まずは、「追完請求」の催告をしなければなりません。
・売主が、”追完はしない”とはっきり意思表示をしているなど、催告をしてもムダだと思える事情がある場合には、「追完請求」の催告をすっ飛ばして、代金減額請求をすることができます。
・この場合の、代金減額請求は形成権ですから、この権利者の一方的な意思表示によって、代金の減額請求ができるということです。
 
形成権とは?
権利者の一方的な意思表示によって、法律関係に一定の変更を生じさせる権利のこと

代金減額請求権の要件は、次の3つです。

①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと
②買主に帰責事由がないこと
③買主からの履行の追完の催告で、その期間内に履行の追完がないこと

代金減額請求権の期間制限は、
原則:種類・品質に関する「契約不適合」➡買主がその不適合を知ったときから1年以内
例外:売主がその不適合について「悪意」or「重過失」のとき

【目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合】
買主は、 期間の制限なく 、追完請求権・代金の減額請求権・損害賠償請求権・解除権を行使することができます。

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c.解除権

解除権の内容は、次のとおりです。

債務不履行に基づき売買契約を解除する(形成権)
【形成権とは?】
権利者の一方的な意思表示によって、法律関係に一定の変更を生じさせる権利のこと
つまり、債務不履行に基づく売買契約の解除は、この解除権を持つ権利者の一方的な意思表示によって、契約解除ができるということです。

解除権の要件は、次の3つです。

①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと
②買主に帰責事由がないこと
③買主からの履行の追完の催告でその期間内に履行の追完がなく、かつ債務不履行が軽微でないこと

解除権の期間制限は、
原則:種類・品質に関する「契約不適合」➡買主がその不適合を知ったときから1年以内
例外:売主がその不適合について「悪意」or「重過失」のとき

【目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合】
買主は、 期間の制限なく 、追完請求権・代金の減額請求権・損害賠償請求権・解除権を行使することができます。

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d.損害賠償債権

買主の権利-損害賠償債権
【損害賠償請求する例】
買主たち住人は、マンションを購入したが、後日、そのマンションは耐震構造が基準に達しておらず、住むには危険な状態のマンションだということが判明した。
そこで、買主たちは、売主に対し損害賠償請求をした。

損害賠償債権の内容は、次のとおりです。

債務不履行に基づく損害賠償請求

損害賠償債権の要件は、次の2つです。
①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと
②買主に帰責事由がないこと

損害賠償債権の期間制限は、
原則:種類・品質に関する「契約不適合」➡買主がその不適合を知ったときから1年以内
例外:売主がその不適合について「悪意」or「重過失」のとき

【目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合】
買主は、 期間の制限なく 、追完請求権・代金の減額請求権・損害賠償請求権・解除権を行使することができます。

>>『行政書士ブログ/民法/債権/契約各論/権利移転型契約/売買契約④損害賠償債権』へ戻る

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e.追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除権まとめ表

  追完請求権 代金減額請求権 損害賠償債 解除権

・目的物の修補
・代替物の引渡し
・不足分の引渡し
・代金を減額請求
(形成権)
債務不履行に基づく損害賠償請求 債務不履行に基づき売買契約を解除する
(形成権)

①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと

②買主に帰責事由がないこと
①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと

②買主に帰責事由がないこと

③買主からの履行の追完の催告で、その期間内に履行の追完がないこと
①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと

②買主に帰責事由がないこと

①引渡された目的物の種類・品質or数量が契約の内容に適合しないこと

②買主に帰責事由がないこと

③買主からの履行の追完の催告で、その期間内に履行の追完がなく、かつ、債務不履行が軽微でないこと



原則:種類・品質に関する「契約不適合」➡買主がその不適合を知ったときから1年以内
例外:売主がその不適合について「悪意」or「重過失」のときは、この限りでない。

【目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合】
買主は、 期間の制限なく 、追完請求権・代金の減額請求権・損害賠償請求権・解除権を行使することができます。

原則的には「買主がその不適合を知ったときから1年以内」ですが、売主が「数量」に関する「契約不適合」なものを引き渡したのなら、上記のような期間制限はなく、「債権の消滅時効(166Ⅰ)」によって処理されることになります。

つまり、「数量」に関して契約不適合であるときについては、「失権効(566)」がないんだニャ。だから、解除権が消滅しない限り、契約の解除をすることができるんだニャ。

引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものであるときには、買主は売主に対して、例えば履行の追完請求することができます。
内容としては「目的物の修補」や「代替物の引渡し」です。

そしてその履行の追完請求するのに、売主の帰責事由がなくても構いません。

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f.買主の権利と帰責事由

買主の4つの権利と、その帰責事由についてをまとめた表が次のとおりです。

※表の中の「あり」とは、「買主に権利がある」ということです。

  追完請求権 代金減額請求権 損害賠償債権 解除権
売主に帰責事由がある場合 あり あり あり あり
双方に帰責事由がない場合 ※1 あり あり ナシ あり
買主に帰責事由がある場合 ナシ ナシ ナシ ナシ

※1
売主にも買主にも帰責事由がない場合に、買主側としては、「追完請求権」「代金減額請求権」「解除権」は行使できても、売主に帰責事由がないのに、さすがに「損害賠償請求」までは、できません。

帰責事由のない売主にとって、それは酷だからです。

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03 危険負担の移転

危険負担の移転

【危険負担とは?】

民法では、「危険負担」という考え方があります。
危険負担とは、売買契約等の双務契約において、一方の債務が、災害などの「債務者の責任(帰責性)がない事由」によって、履行できなくなった場合に、他方の債務はどうなるのか?代金の支払いはどうなるのか?という問題が出てきます。
これを具体例でいうと、
①たとえば、売主Aと買主Bの間で、中古の一戸建ての売買契約が成立しました。
中古の一戸建て(目的物)の引渡しと引換えに、代金を支払うことになっていました。
②ところが、その一戸建ての引渡し前に、大地震により、一戸建てが滅失してしまいました。
この場合、売主Aの「引渡し債務」は、履行不能となり、消滅します。
③では、この場合に、買主Bは代金を支払う必要があるのでしょうか。
【引渡し前】
双方の帰責事由がない場合には、
・売主Aの「代金債権」は消滅しませんが、
・買主Bは『代金の支払いを拒むことができる』ことと、なります。
 
特定物・特定した目的物の【引渡しの後】での危険移転は次のとおり。
【売主の帰責事由がない場合】

目的物の引渡し後、目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって、滅失・損失したとき、買主は、
・追完請求,代金減額請求,損害賠償請求,解除はできません。
・代金の支払いを拒むこともできません。
【売主の帰責事由がある場合】

目的物が買主に引き渡された後に、目的物が滅失・損失したとき買主は、
①追完請求 ②代金減額請求 ③損害賠償請求及び ④解除をすることができます。

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以上、

01 売主の担保責任
02 買主の権利
 a.追完請求権
 b.代金減額請求権
 c.解除権
 d.損害賠償債権
 e.追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除権まとめ表
 f.買主の権利と帰責事由
03 危険負担の移転
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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