区分建物に関する登記
公開日 2020年8月7日 最終更新日 2021年11月25日
もくじ
◆土地or建物のみを目的とする権利の登記の可否
登記不可 | 登記 可 | |
所 有 権 |
所有権移転 バラバラになるので前でも後でも不可 |
①敷地権発生前に原因生じた 所有権移転の仮登記 「仮登記の本登記」は敷地権の表示の登記等を 抹消した後にしか申請できない |
※原因が『相続』『時効取得』でも不可 | ②敷地権が「地上権」「賃借権」 の土地の所有権移転 |
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抵 ・ 根 ・ 質 |
①敷地権発生後に原因生じた (根)抵当権設定,質権設定 |
①敷地権発生前に原因生じた (根)抵当権設定,質権設定(※1) |
②敷地権が賃借権の場合に |
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②敷地権発生後に原因生じた 根抵当権の極度額の増額変更(※1) |
③根抵当権の「債権の範囲」「債務者」 の変更 |
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先 取 特 権 |
一般の先取特権 一般の先取特権は「債務者の総財産」の上に 生ずる権利。 なので「区分建物」のみに成立することは ありえない |
特別の先取特権 (※3 不動産工事の先取特権参照) 不動産売買の先取特権は除く |
用 益 権 |
①敷地権付区分建物のみを目的 とする賃借権設定 「敷地権」とはそもそも「持分」 →「持分」に「賃借権」は設定できない |
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②土地のみの区分地上権 | ||
③土地のみの地役権 | ||
①差押え (※2) | ①敷地権発生前に設定された担保権の 実行による差押え (※2) |
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②仮差押え (※2) | ②処分禁止の仮処分 (※2) |
(※1)
敷地権発生後に原因生じた 根抵当権の極度額の増額変更 |
根抵当権の極度額の増額変更は実質新たな「根抵当権設定」と同視される。 なので、敷地権発生後の極度額の増額変更は分離処分にあたる。 |
敷地権発生前に原因生じた 根抵当権の極度額の増額変更 |
同じ根抵当権の極度額の増額変更でも、敷地権発生前に原因生じたのなら、担保権設定は認められるので敷地権発生前の増額変更は認められる。 |
(※2)
強制執行による差押え | 一般債権者がする「強制執行」や「仮差押」は区分建物と敷地の両方を目的とすることが元々できる。 つまり元々「分離処分禁止」と同じベクトルに向いている。 だったら、どちらか一方にだけ「差押え」「仮差押」を認める意味がない。 |
仮差押え | |
敷地権発生前に設定された 担保権実行による差押え |
「担保権(ex:抵当権)」は通常土地か建物の一方にかかっていたり、 「処分禁止の仮処分」も、「建物を処分禁止とする」というように、 「担保権実行の差押え」も「処分禁止の仮処分」は、元々どちらか一方になされるものなので。 |
処分禁止の仮処分 |
◆区分建物についての登記の効力と登記記録
1.建物のみに関する旨の付記されるケース
1 | 抵当権設定登記がされている土地を敷地とし、 |
2 | 区分建物が新築された |
3 | 敷地権の表示の登記がされた |
4 | 敷地に設定されている抵当権の被担保債権と同一債権を 担保するため、区分建物のみを目的として抵当権設定登記 がされたとき ▼ |
5 | 登記官の職権により『建物のみに関する旨』が付記される。 |
2.建物のみに関する旨の付記がされないケース
※3建物のみの不動産工事の先取特権
1 | 「特別の先取特権(不動産保存・不動産工事)」や「賃借権」の登記は、 「建物のみ」に関する権利であることが明らか。 |
2 | なので、 ex:敷地権の登記が生じた後でも、「建物のみ」を目的とする「不動産工事の先取特権」は可。 |
3 | そして、 「不動産工事の先取特権」は敷地権を目的とはしないので、 |
▼ | |
4 | 『建物のみに関する旨』が付記がされることはなく、当然に「建物のみ」を目的とする。 |
3.敷地の抵当権の登記が抹消されるケースⅠ
1 | 敷地権の表示の登記がない 区分建物に抵当権設定登記がされている |
2 | 敷地権の表示の登記がされた |
3 | 建物にされている抵当権の被担保債権と同一債権を 担保するため、敷地権となった土地にも抵当権設定 登記がされているとき、 ▼ |
4 | 土地についてされている抵当権の登記が抹消される。 |
4.敷地の抵当権の登記が抹消されるケースⅡ
1 | 土地と建物に共同抵当権設定の登記がされている |
2 | 敷地権の登記がされた ▼ |
3 | 登記官の職権により、土地の権利の共有持分にされた抵当権の登記が抹消される。 |
【理由】 「区分建物にされた登記」は「敷地権の登記」としての効力も有する ▼ 土地抵当権と同一内容の登記が区分建物にされているのなら、 「区分建物の抵当権」の登記を残しておけば、 「敷地権」と「区分建物」の両方に登記がされていることになる。 ▼ 敷地権にされていた抵当権の登記が抹消される。 |

区分建物のみに効力を有する登記がされた場合は、
「建物のみに関する旨」の付記登記が入ります。

建物にだけ効力が及ぶのが当たり前なら、
建物のみに関する旨の付記登記は不要よ。
たとえば、「敷地権」とはそもそも「持分」なので、
「持分」に「賃借権」は設定できないし、
「不動産保存・不動産工事の先取特権」も、
「建物のみ」に関する権利であることが明らかよ。

そもそも両方を目的とすることができない場合は、
分離処分には当たらないんだよ。