【不動産登記法】承継執行文の付与,承継執行文と相続,口頭弁論終結前後のながれまとめ

【不動産登記法】承継執行文 判決登記

今回の記事は、不動産登記法/承継執行文の付与についてです。

01 執行文とは?
 a.単純執行文
 b.条件成就執行文
 c.承継執行文
02 承継執行文と相続
 a.登記義務者側に相続があった場合の承継執行文の付与
 b.義務者側の相続人が相続登記を入れなかった場合
03 口頭弁論終結 前後のながれ
 a.口頭弁論終結後の登記権利者・登記義務者との承継執行文の関係
 b.口頭弁論終結前に訴訟当事者に承継があった場合

01 執行文とは?

執行文とは、裁判などで得た「債務名義」が、執行可能かどうかなどの執行力の存在や、執行の当事者の適格性などを、裁判所書記官・公証人が審査し、執行可能であることについてのお墨付きを与えるものです。
債務名義の正本の末尾に付記される公証文言です。

この「執行文」があることによって、執行裁判所や執行官は、実質的な調査を必要とせず、簡易に執行に着手できるようになります。

判決で勝訴した債権者は、「債務名義(判決文等)」を取得した裁判所の書記官に対して「執行文付与の申立て」を行うことになります。

こうして、「債務名義」+「執行文」により、強制執行の実現がなされます。

債務名義+執行文→強制執行の実現

そして、執行文には次の3つの種類があります。

a.単純執行文
b.条件成就執行文
c.承継執行文
執行文の種類-単純執行文・条件成就執行文・承継執行文

a.単純執行文

単純執行文

最も基本的な執行文で、「債務名義」の執行力を単純に公証するものです。

 

【執行文】

強制執行の開始を求めるには、債務名義に「執行文の付与」を受けることが必要です。
執行文の付与は、強制執行ができるか否か?というものです。

b.条件成就執行文

条件成就執行文とは、請求が ” 債権者の証明すべき事実の到来 ” に係っている場合です。
債権者がその事実の到来を証明したときに付与される執行文のことです。

例:
・停止条件の成就・・・「Aが死亡したら」が停止条件だった場合に、Aの死亡を確認した上で作成されます。
・不確定期限の到来・・・期限が到来すれば作成されます。

c.承継執行文

承継執行文とは、” 債務名義に表示された当事者以外の者 ” を債権者又は債務者とする場合に、必要な執行文のことです。

例えば、口頭弁論終結後に登記義務者に相続が開始した場合に、承継執行文の付与を受けることによって、相続人を強制執行手続の当事者とできるようにするために付与されます。

不動産登記では、原則として「共同申請」が基本です。
共同で申請することによって、登記権利者と登記義務者の意思確認を担保するからです。

そういう意味では「判決登記」は例外的な位置づけで、勝訴判決を得ることによって、「登記義務者の意思擬制」することができます。

「登記義務者の意思擬制」できるからこそ、判決登記での権利者(勝訴した側)は、「単独申請」することが可能です。

なので、登記申請の意思擬制には、原則として執行文は不要です。
 
【承継執行文の付与】

「判決登記」
での申請の意思擬制には、原則として執行文は、不要です。
承継執行文の付与は、執行文の範囲をどこまで及ぼすことができるか?というものです。

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02 承継執行文と相続

不動産登記で「承継執行文」が出てくる場面は、口頭弁論終結後になります。

【口頭弁論終結 前】
口頭弁論終結前であれば「訴訟当事者の変更」の問題であって、承継執行文の問題ではありません。
【口頭弁論終結 後】
口頭弁論終結後の「承継人(登記義務者)」に関して、承継執行文の問題が出てきます。

たとえば、口頭弁論終結後に、相続があった場合に、相続人(承継人)に承継執行文が絡んでくるのニャ。

a.登記義務者側に相続があった場合の承継執行文の付与

口頭弁論終結後に、登記義務者側に相続が開始した場合の「承継執行文の付与」について、事例を交えて解説します。


【事例 口頭弁論終結後に登記義務者に相続が開始し、相続登記を入れた場合】

1⃣AからBへの「所有権移転登記手続を命じる判決」が確定しました。
2⃣ 口頭弁論終結後に、登記義務者Aが死亡しました。
3⃣ 亡Aの相続人Cが、原因:相続による所有権移転登記を入れました。

1⃣AからBへの「所有権移転登記手続を命じる判決」が確定しました。

AからBへの所有権移転登記手続きを命じる判決が確定した

2⃣口頭弁論終結後に、登記義務者Aが死亡しました。

承継執行文-口頭弁論終結後に、登記義務者Aが死亡

3⃣ 亡Aの相続人Cが、原因:相続による所有権移転登記を入れました。

承継執行文-亡Aの相続人Cが、原因:相続による所有権移転登記を入れた
4⃣Bは「相続人等の包括承継人(C)の戸籍謄本等」を提出すれば、「承継執行文が付与」されます。
5⃣そして、Bは「承継執行文の付与」を受け、単独でCからBへの所有権移転登記を申請することができます。
甲区2番で「相続人C」が相続登記をしていますが、そもそもこの不動産は、すでに「Aの相続財産」に属していません。

なので本来的には、AからCへの「相続登記」を抹消すべきところ、便宜上、直接CからBへの所有権移転登記が認められます。

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b.義務者側の相続人が相続登記を入れなかった場合

上記の事例の場合に、相続人Cが相続登記を入れなかった場合には、勝訴した登記権利者Bは、「承継執行文の付与」を受けなくとも、普通に判決による単独申請登記をすることができます。

登記義務者が死亡して、実際には相続が開始していても、「債務名義」じたいは、故:登記義務者のままだから、登記官としては、申請受理せざるを得ないからです。

相続登記が入ってなければ、登記義務者が死亡してるとバレないわけで、承継執行文の付与を受けなくても、フツーに判決登記として単独申請できるってことニャ。

03 口頭弁論終結 前後のながれ

【口頭弁論終結 前】
口頭弁論終結前であれば「訴訟当事者の変更」の問題であって、承継執行文の問題ではありません。
【口頭弁論終結 後】
口頭弁論終結後の「承継人(登記義務者)」に関して、承継執行文の問題が出てきます。

a.口頭弁論終結後の登記権利者・登記義務者との承継執行文の関係

登記権利者の変更
(勝訴した側)
 不 要
※登記権利者側なんだから、「執行される側」ではないので、承継執行文の話しは出てきません。
登記義務者の変更 一般承継
  例:相続
承継執行文の付与が 必要です。
特定承継
  :売買
民177の対抗関係の話しになってきます。
※承継執行文の話しは出てきません。

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b.口頭弁論終結前に訴訟当事者に承継があった場合

口頭弁論終結前に、訴訟当事者に承継があった場合には、そもそも「訴訟当事者の変更」の問題であって承継執行文の問題ではありません。

【事例 口頭弁論終結後に登記義務者に相続が開始し、相続登記を入れた場合】

1⃣Bが、Aに対し、「所有権移転登記請求訴訟」を提起しました。
2⃣その訴訟の係属中に、被告側A(現:所有権名義人)は、第三者Cに対し不動産を売買し、Cは所有権移転登記を備えました。

1⃣Bが、Aに対し、「所有権移転登記請求訴訟」を提起しました。

口頭弁論終結前に当事者の承継があった場合-1

2⃣その訴訟の係属中に、被告側A(現:所有権名義人)は、第三者Cに対し不動産を売買し、Cは所有権移転登記を備えました。

口頭弁論終結前に当事者の承継があった場合-2

このような場合に、たとえ、原告Bが勝訴しても、登記を備えた第三者Cには対抗できません。

 

原告Bは訴訟係属中に、「処分禁止の仮処分」などの処置をしておくべきだったわけです。
このように、訴訟係属中での承継は「訴訟当事者の変更」の問題であって、承継執行文の問題ではありません。

以上、

01 執行文とは?
 a.単純執行文
 b.条件成就執行文
 c.承継執行文
02 承継執行文と相続
 a.登記義務者側に相続があった場合の承継執行文の付与
 b.義務者側の相続人が相続登記を入れなかった場合
03 口頭弁論終結 前後のながれ
 a.口頭弁論終結後の登記権利者・登記義務者との承継執行文の関係
 b.口頭弁論終結前に訴訟当事者に承継があった場合
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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