発行する全部の株式の内容についての登記
公開日 2017年4月26日 最終更新日 2020年7月10日
もくじ
発行する全部の株式の内容
全部の株式の内容として定めることができる株式(登記事項)
①譲渡制限株式 | 譲渡による株式の取得について会社の承認を要すること |
②取得請求権付株式 | 株式について「株主」が株式会社に対し、その取得を請求することができる |
③取得条項付株式 | 株式について「会社」が一定の事由が生じたことを条件として、これを取得することができる |
※単一株式発行会社では、全部の株式の内容が同一でなければならない。
※上記①~③の内容を組み合わせることもできるが、組み合わせた上で、
全部の株式の内容につき同一でなければならない。
①譲渡制限株式〈全部の株式の内容としていくとき〉
定款で定めなければならない事項 | a.当該株式の譲渡により取得することについて、株式会社の承認を要する旨 |
b.一定の場合において「株式会社が譲渡等の承認をしたものとみなす」ときはその旨及びその「一定の場合」について ex:『譲渡の相手方が既存株主又は従業員の場合は、株式会社が譲渡を承認したものとみなす』 |
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決 議 | 定款変更をして「譲渡制限に関する定め」を「設定」する場合 ⇒ 株主総会/特殊決議 特殊決議:議決権を行使できる株主の半数以上、当該株主の議決権の2/3以上の賛成 |
「変更(拡大・縮小)」及び「廃止」に係る定款変更 ⇒株主総会/特別決議 で足りる |
②取得請求権付株式〈全部の株式の内容としていくとき〉
「株主」が株式会社に対し、その株式の取得を請求することができる株式
定款で定めなければならない事項 | a.株主が会社に対して、当該株式を取得することを請求できる旨 |
b.株主が会社に対して、当該株式を取得することを請求できる「期間」 | |
c.取得の対価の内容 会社が株式を取得するのと引換えに株主に交付する、会社の社債・新株予約権・新株予約権付社債・その他の財産の内容及び数or算定方法等 ※「全ての株式の内容」が同一のため「種類株式発行会社」とは違って |
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決 議 | 定款変更をして上記の内容を「設定」or「変更(廃止)」をする場合 ⇒株主総会/特別決議 |
③取得条項付株式〈全部の株式の内容としていくとき〉
「会社」が株主に対して一定の事由が生じたことを条件として取得する株式
定款で定めなければならない事項 | a.一定の事由が生じた日に会社がその株式を取得する旨&その事由 |
b.会社が別に定める日が到来することをaの事由とするときは、その旨 | |
c.上記aの事由が生じた日に一部の株式を取得することとするときは、 その旨&取得する「一部の株式」の決定方法 |
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d.取得の対価 ※「全ての株式の内容」が同一のため「種類株式発行会社」とは違って |
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決 議 |
定款変更をして上記の内容を「設定」or「変更(廃止は除く)」をする場合 添付書面:・株主総会議事録 |
廃止に係る定款変更 |
まとめ表
設定 | 変更 | 廃止 | |
譲渡制限株式 |
定款変更のための 株主総会/特殊決議 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 |
取得請求権付株式 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 |
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取得条項付株式 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 株主全員の同意 |
定款変更のための 株主総会/特別決議 株主全員の同意 |
種類株式の追加・既発行の種類株式の内容の変更
定款変更決議 (注1) |
会社111 種類株主総会決議 (注2) |
会社322Ⅰ 種類株主総会決議 (注3) |
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①剰余金の配当 | 株主総会/特別決議 | 種類株主総会 の特別決議 |
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②残余財産の分配 | |||
③議決権制限 | |||
④譲渡制限 | 種類株主総会 の特殊決議 |
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⑤取得請求権 | |||
⑥取得条項付 | 種類株主全員 の同 意 |
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⑦全部取得条項付 | 種類株主総会 の特別決議 |
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⑧拒否権付 (黄金株) |
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⑨取締役等選任権 |
(注1)「種類株式を新たに追加する」or「既存発行の種類株式の内容を変更をする」場合
(注2)「既存発行の種類株式の内容を変更をする」場合
会社111の「種類株主総会」の特別決議・全員の同意
(◯要する /✖要しない)
設定 | 変更 | 廃止 | |
株式譲渡制限の定め (特殊決議) |
◯ | ✖ | ✖ |
取得条項付株式の定め (全員の同意) |
◯ | ◯ | ✖ |
全部取得条項付種類株式 の定め (特別決議) |
◯ | ✖ | ✖ |
(注3)「種類株式を新たに追加する」or「既存発行の種類株式の内容を変更をする」場合
※種類株主総会の決議(会社111)及び種類株主全員の同意が要求されている場合には
「種類株主総会/特別決議(会社322)」は不要
ある種類の株主に損害を及ぼす場合
ある種類の株主に損害を及ぼす場合には「種類株主特別決議」が要求される。
イ 株式の「種類」の追加 「C優先株」ができたことで「A普通」も「B優先」にも不利益要素が出てくる。 |
ロ 株式の「内容」の変更 これは明らかに「B優先」にとって不利益要素が出てくる。 |
ハ 『発行可能株式総数』又は『発行可能「種類株式」総数』の増加 「A普通」と「B優先」があって「B優先」の「発行可能株式総数」が増えるとき |
申請書例
申請書例-「取得請求権付株式」を株式の全部の内容と定めた場合
1 登記の事由
会社が発行する株式の内容の変更 |
1 登記すべき事項
平成28年7月1日変更 発行する株式の内容 1.株主はいつでも当会社に対して当会社の株式を時価で取得することを 請求することができる。 2.「時価」とは、当該取得請求日に先立つ45取引日に始まる30取引日の 株式会社東京証券取引所における毎日の終値の平均値をいう。 |
【POINT】
「譲渡制限」の設定→株式の譲渡制限に関する“設定” 「取得条項付株式」の設定→“変更” |
1 登録免許税
金3万円(ツ) |
1 添付書面
株主総会議事録 1通 委任状 1通 |