反対株主の株式買取請求権

株主の株式買取請求権 株式買取請求権

株式買取請求権とは、会社に対して、株主が保有する株式の買取を請求する権利のことです。
この株式買取請求権の中にも、大きく分けて2つの買取請求権があります。

・「決議に反対する株主(反対株主)」による株式買取請求権
・「単位未満株式を保有する株主」による株式買取請求権
・・・の2つです。

そして、株主が「株式を買い取ってくれ!」と請求できることになるパターンとして、大まかに分けて次の5つの場合があります。

 
【株式買取請求権が発生する ” 4つの会社の行為 ” と ” 議決権行使できない株主 ” 】
a.譲渡制限株式に関連すること
b.全部取得条項付種類株式に関連すること
c.株式の併合・分割・割当てに関連すること
d.組織再編に関連すること
e.議決権を行使できない株主
今回の記事は、上記の4つの ” 会社の行為 ” と「議決権行使できない株主」について、更にくわしくまとめました。

01 株主の株式買取請求権が発生する場合

株主の株式買取請求権が発生する パターンとして次の5つに分けて、イラスト関係図付きでわかりやすく解説します。

a.譲渡制限株式に関連すること
b.全部取得条項付種類株式に関連すること
c.株式の併合・分割・割当てに関連すること
d.組織再編に関連すること
e.議決権を行使できない株主

a.譲渡制限株式に関連すること

株主の株式買取請求権が発生する ” 会社の行為 ” の内、「譲渡制限株式に関連すること」については、次の2つのパターンがあります。

・株式に「譲渡制限株式の設定」がされた場合
・「取得請求権付株式」や「取得条項付株式」の「取得対価である株式」に「譲渡制限株式の設定」をする場合
上記の場合、いずれも結局、譲渡制限株式を持つことになってしまいます。

①譲渡制限株式の設定がされる場合

株主の株式買取請求権-譲渡制限株式設定される場合
譲渡制限株式とは、譲渡による株式の取得について会社の承認を要する株式です。

株主が、資本(株式を取得するための資金)を出すことを『資本投下』というニャ
その「投下した資本」を回収するには、保有している株式を他人に譲渡していくのニャ

つまり、「投下資本」を回収するには株式を他人に譲渡しないと話しにならないのに、自分の株式が「譲渡制限株式」に変更されたら、嫌がる株主が出てくるってわけニャ

【事例①】

株主Aは、これまで普通株式を保有していました。
ところが、会社側が、その普通株式に「譲渡制限株式の設定」をしました。

株主Aとしては、「譲渡に制限がある株式になってしまうなら、こんな株式はいらない!」となり、ここで買取請求権が発生するというわけです。

②取得請求権付・取得条項付の取得対価である株式に、譲渡制限株式の設定がされる場合

株主の株式買取請求権-取得対価に譲渡制限株式設定される場合
譲渡制限株式とは、譲渡による株式の取得について会社の承認を要する株式です。
「取得請求権付株式」と「取得条項付株式」の「取得対価である株式」に、
→譲渡制限株式の設定がされる場合です。
 
【事例①】
株主Bは、取得請求権付株式を保有しています。その取得対価は、これまでは普通株式でした。
ところが、会社側が、その普通株式に「譲渡制限株式の設定」をしました。

株主Bとしては、「取得対価である株式が、譲渡制限株式になってしまうなら、こんな株式はいらない!」となり、ここで買取請求権が発生するというわけです。

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b.全部取得条項付種類株式に関連すること

株主の株式買取請求権が発生する ” 会社の行為 ” の内、「全部取得条項付株式に関連すること」については、次の2つのパターンがあります。

・株式に「全部取得条項付株式の設定」がされた場合
・「取得請求権付株式」や「取得条項付株式」の「取得対価である株式」に、
 →「全部取得条項付株式の設定」をする場合
上記の場合、いずれも最終的には、会社に株式を全部取得されてしまうことになります。
いわゆるキャッシュアウト(お金で追い出される)みたいな状態になるわけです。

①全部取得条項付株式の設定がされる場合

株式買取請求権-株式に全部取得条項付株式の設定がされる場合
全部取得条項付種類株式とは、
会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式です。
 
【事例①】
株主Aは、これまで普通株式を保有していました。
ところが、会社側が、その普通株式に「全部取得条項付株式の設定」をしました。

株主Aは、株主としては追い出される形になってしまいます。
そこで、「しょうもない対価はいらないから、この株式を買い取ってくれ!」となり、ここで買取請求権が発生するというわけです。

②取得請求権付・取得条項付の取得対価である株式に、全部取得条項付株式の設定がされる場合

株式買取請求権-取得請求権付株式の取得対価に全部取得条項付株式の設定がされる場合
全部取得条項付種類株式とは、
会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる株式です。
「取得請求権付株式」と「取得条項付株式」の「取得対価である株式」に、
→全部取得条項付株式の設定がされる場合です。
 
【事例】
株主Bは、取得請求権付株式を保有しています。その取得対価は、これまでは普通株式でした。
ところが、会社側が、その普通株式に「全部取得条項付株式の設定」をしました。

株主Bとしては、「いずれ追い出される形になるんなら、今、この株式を買い取って!」となり、ここで買取請求権が発生するというわけです。

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c.株式の併合・分割・割当てに関連すること

会社の行為として、

・株式の併合
・株式の分割
・株式無償割当て
・単元株式数の定款の変更
・募集株式の発行(※株主割当の場合に限る)
・募集新株予約権の発行(※株主割当の場合に限る)
・新株予約権無償割当て
・・・の7つのパターンにおいて、
①譲渡制限株式の設定
②全部取得条項付株式種類株式の設定
・・・の場合において、

・種類株主に損害を及ぼす恐れがあるとき
・「種類株主総会の決議を要しない旨」の定めがあるとき

・・・については、株主の株式買取請求権が発生します。

株式の併合-単元株式数の定め

会社の行為として、

・株式の併合
・・・のパターンにおいて、
①譲渡制限株式の設定
②全部取得条項付株式種類株式の設定
・・・の場合において、

①「株式の併合」の対象となる株式の単元株式数を定めていない場合
②「株式の併合」の対象となる株式の単元株式数に「株式の併合の割合」を乗じて得た数に、一に満たない端数が生ずる場合

・・・については、株主の株式買取請求権が発生します。

d.組織再編に関連すること

株式買取請求権-組織再編のときに発生する

株主の株式買取請求権が発生する ” 会社の行為 ” の内、「組織再編に関連すること」については、次の5つの場合があります。

・事業譲渡
・合併
・会社分割
・株式交換
・株式移転
上記の場合のように、会社が「組織再編行為等」をするときは、基本的に株式買取請求が認められます。
 
事業譲渡の場合に、『事業の全部譲渡の承認決議』が ” 解散決議と同時 ” にされた場合には、株式買取請求はできません。
→事業を全部譲渡した上で、解散しようってことは、かなり崖っぷち状態の会社なので、そんな会社に対して株式の買取請求は、酷だと覚えるとイイです。
 
” 総株主の同意を要する ” 場合の、組織再編では、株式買取請求はできません。
→事前に総株主が同意しているんだから、今さら株式買取請求も何もないでしょうってことです。
 
「簡易組織再編」又は「簡易事業譲渡」をする場合、『存続会社等』又は『譲受会社』の株主は、株式買取請求はできません。
→総資産の1/5以下という大したことない規模のものなので、できないということです。
 
「略式組織再編」又は「略式事業譲渡」をする場合、『特別支配会社』は、株式買取請求できません。 
→特別支配会社とは、総株主の議決権の90%以上の株式を保有している会社です。
そんな会社から、株式の買取請求されたら、たまったものではありません。
下記のイラストを参照して下さい▼
「特別支配会社」のイメージ図はこんな感じです。
特別支配会社のイメージ図

e.議決権を行使できない株主

議決権を行使できない株主は、株主総会に呼ばれることもなく、決議に参加できないので、「それが不満なら、株式を買い取りしますよ」みたいな感じです。

そして、これには、単元未満株主についても、議決権行使できない株主に含まれます。

02 株式買取請求権できる場合まとめ表

株式買取請求権できる場合をまとめた表は、次のとおりです。

会社の行為 対象の株式
a.譲渡制限 ①譲渡制限株式の設定   譲渡制限株式

取得請求権付株式
取得条項付株式


の取得対価である株式に、譲渡制限株式の設定

  取得請求権付株式
取得条項付株式
b.全部取得条項付株式

①全部取得条項付株式の設定   全部取得条項付株式

取得請求権付株式
取得条項付株式

の取得対価である株式に、譲渡制限株式の設定

  取得請求権付株式
取得条項付株式
c.株式の
併合・分割
・割当て


①株式の併合
②株式の分割
③株式無償割当て
④単元株式数の定款の変更
⑤募集株式の発行 ※1
⑥募集新株予約権の発行 ※1
⑦新株予約権無償割当て
①譲渡制限株式の設定
②全部取得条項付株式の設定
の場合に、

・種類株主に損害を及ぼす恐れがあるとき
・種類株主総会決議を要しない旨の定めがあるもの

①株式の併合 ・併合の対象となる株式の単元株式数を定めていない場合
・併合の対象となる株式が、一株に満たない端数となる株式
d.組織再編等 ①事業譲渡 ※2
②合併
③会社分割
④株式交換
⑤株式移転
  当事会社の株式
※3・4・5
e.議決権を行使できない株主    
※1 株主割当の場合に限ります。
※2 事業譲渡の場合に、『事業の全部譲渡の承認決議』が ” 解散決議と同時 ” にされた場合には、株式買取請求はできません。
※3 ” 総株主の同意を要する ” 場合の、組織再編では、株式買取請求はできません。
※4「簡易組織再編」又は「簡易事業譲渡」をする場合、『存続会社等』又は『譲受会社』の株主は、株式買取請求はできません。
※5「略式組織再編」又は「略式事業譲渡」をする場合、『特別支配会社』は株式買取請求できません

以上、株主の株式買取請求権についての、

01 株主の株式買取請求権が発生する場合
 a.譲渡制限株式に関連すること
   ①譲渡制限株式の設定がされる場合
   ②取得請求権付・取得条項付の取得対価である株式に、譲渡制限株式の設定がされる場合
 b.全部取得条項付種類株式に関連すること
   ①全部取得条項付株式の設定がされる場合
   ②取得請求権付・取得条項付の取得対価である株式に、全部取得条項付株式の設定がされる場合
 c.株式の併合・分割・割当てに関連すること
   株式の併合-単元株式数の定め
 d.組織再編に関連すること
 e.議決権を行使できない株主
02 株式買取請求権できる場合まとめ表
・・・でした。お疲れ様でした。
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