抵当権の順位譲渡・順位放棄をイラスト付きでわかりやすく解説

抵当権のみの順位譲渡・順位放棄をイラスト付きでわかりやすく解説 抵当権の処分

この記事に沿ったYouTube動画を作成しました。記事と共にご視聴いただけましたら幸いです。

抵当権の処分系には、次の3つの似通ったものがあります。

1.抵当権の処分
 抵当権(のみ)の譲渡
 抵当権(のみ)の放棄
2.
 Ⅰ.抵当権(のみ)の順位譲渡
 Ⅱ.抵当権(のみ)の順位放棄
3.抵当権の移転
今回の記事では、この中の『Ⅰ.抵当権(のみ)の順位譲渡』と『Ⅱ.抵当権(のみ)の順位放棄』についてをイラスト関係図を使って、わかりやすく解説していきます。

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01 抵当権(のみ)の順位譲渡

【抵当権(のみ)の順位譲渡とは?】

例えば、第1順位の抵当権者が、後順位の抵当権者に対し、順位を譲ってあげることです。

順位を譲ってもらった後順位の抵当権者は、本来なら「第1順位の抵当権者」が受けるべき「配当金」プラス「後順位抵当権者」が受ける「配当金」の合計額の範囲内で、優先弁済権を確保することができます。
上記の内容をここから更にくわしく、登記記録例やイラスト関係図などで解説しています。

登記記録例とイラスト関係図

抵当権(のみ)の順位譲渡を、事例を交えて、登記記録であらわしてみました。

【事例】

現在、甲区1番 所有権者Xの甲土地に、
①乙区1番で抵当権者A(債権額2,000万円)が入っています。
②乙区2番で抵当権者B(債権額1,500万円)が入っています。
③乙区3番で抵当権者C(債権額1,800万円)が入っています。
これを登記記録であらわすと次のようになります。
《甲土地》
甲区 乙区
所有権保存
  X
抵当権設定
 債権額 金2,000万円
 債務者 X
 抵当権者 A
    抵当権設定
 債権額 金1,500万円
 債務者 X
 抵当権者 B
    抵当権設定
 債権額 金1,800万円
 債務者 X
 抵当権者 C

上記の事例をイラスト関係図であらわすとこんなイメージになります。

競売による配当

【事例】

所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金4,000万円でした。

通常の場合の配当

この場合の配当金額を表にまとめると次のようになります。

  甲土地の落札価格 金4,000万円

(債権額 2,000万円)
配当金額
2,000万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円

(債権額 1,800万円)
配当金額
500万円
合計 4,000万円

上記の配当金表をイラスト関係図であらわすとこんなイメージになります。

抵当権(のみ)の順位譲渡後の配当

【事例】

所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金4,000万円でした。

「1番抵当権者A」が「3番抵当権者C」に対し、抵当権(のみ)の順位譲渡をしました。
この場合の配当金額を表にまとめると次のようになります。
  通常の配当   順位譲渡後の配当

(債権額 2,000万円)
配当金額
2,000万円
配当金額
700万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円
配当金額
1,500万円

(債権額 1,800万円)
配当金額
500万円
配当金額
1,800万円
合計 4,000万円   4,000万円
「1番抵当権者A」の通常の「配当金額2,000万円」

「3番抵当権者C」の通常の「配当金額500万円」
・・・の合計金額『2,500万円』の範囲内で、

順位譲渡を受けた「3番抵当権者C」は、Aより優先的に配当を受けることができます。

その結果、合計金額の範囲内の「2,500万円」を、
3番抵当権者C(債権額:1,800万円)配当金 1,800万円
1番抵当権者A(債権額:2,000万円)配当金   700万円
・・・という形で、配当を受けることになります。

このことについて、イラストであらわすとこんなイメージになります。

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02 抵当権(のみ)の順位放棄

【抵当権(のみ)の順位放棄とは?】

例えば、第1順位の抵当権者が、後順位の抵当権者に対し、順位を放棄してあげることです。

順位を放棄してもらった後順位の抵当権者は、本来なら「第1順位の抵当権者」が受けるべき「配当金」プラス「後順位抵当権者」が受ける「配当金」の合計額の範囲内で、その債権額の割合で、按分(分け合う)することができます。

登記記録例とイラスト関係図

抵当権(のみ)の順位放棄を、事例を交えて、登記記録であらわしてみました。

【事例】

現在、甲区1番 所有権者Xの甲土地に、
①乙区1番で抵当権者A(債権額3,000万円)が入っています。
②乙区2番で抵当権者B(債権額1,500万円)が入っています。
③乙区3番で抵当権者C(債権額2,000万円)が入っています。
これを登記記録であらわすと次のようになります。
甲区 乙区
所有権保存
  X
抵当権設定
 債権額 金3,000万円
 債務者 X
 抵当権者 A
    抵当権設定
 債権額 金1,500万円
 債務者 X
 抵当権者 B
    抵当権設定
 債権額 金2,000万円
 債務者 X
 抵当権者 C

上記の事例をイラスト関係図であらわすとこんなイメージになります。

競売による配当

【事例】

所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金4,500万円でした。

通常の場合の配当

この場合の配当金額を表にまとめると次のようになります。

  甲土地の落札価格 金4,500万円

(債権額 3,000万円)
配当金額
3,000万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円

(債権額 2,000万円)
配当金額
   0円
合計 4,500万円

上記の配当金表をイラスト関係図であらわすとこんなイメージになります。

抵当権(のみ)の順位放棄後の配当

【事例】

所有権者Xの甲土地が競売にかけられ、売却された落札価格は金4,500万円でした。

「1番抵当権者A」が「3番抵当権者C」に対し、抵当権(のみ)の順位放棄をしました。
 
この場合の配当金額を表にまとめると次のようになります。
  通常の配当   順位放棄後の配当

(債権額 3,000万円)
配当金額
3,000万円
配当金額
1,800万円

(債権額 1,500万円)
配当金額
1,500万円
配当金額
1,500万円

(債権額 2,000万円)
配当金額
   0円
配当金額
1,200万円
合計 4,500万円   4,500万円
「1番抵当権者A」の通常の「配当金額3,000万円」

「3番抵当権者C」の通常の「配当金額 0円」
・・・の合計金額『3,000万円』の範囲内で、

順位放棄を受けた「3番抵当権者C」は「AとCの債権額の割合」でAと配当を按分することができます

その結果、合計金額の範囲内の「3,000万円」を、

『A債権額金3,000万円』:『C債権額金2,000万円』=3:2
→『3:2』の割合で、按分することができます。

1番抵当権者A 600万円✕3=1,800万円 配当金 1,800万円
3番抵当権者C 600万円✕2=1,200万円 配当金 1,200万円 合計3,000万円
・・・という形で、配当を受けることになります。
このことについて、イラストであらわすとこんなイメージになります。

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順位放棄の申請書例

【事例】

現在、甲区1番 所有権者Xの甲土地に、
①乙区1番で抵当権者A(債権額3,000万円)が入っています。
②乙区2番で抵当権者B(債権額1,500万円)が入っています。
③乙区3番で抵当権者C(債権額2,000万円)が入っています。
④そして、1番抵当権Aが、3番抵当権Cに対し、順位放棄しました。
この場合の申請書は次のようになります。
登記の目的 1番抵当権の3番抵当権への順位放棄
原因日付  年 月 日 順位放棄
登記事項 なし
申請人 権利者 C
義務者 A
添付情報 ※登記識別情報は必要!
登録免許税 不動産1個につき 金1,000円

 

以上、抵当権(のみ)の順位譲渡と抵当権(のみ)の順位放棄についてでした。
お疲れ様でした。

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